薬剤師の職場といえば、大学病院や薬局、ドラックストアなどを思い起こしますが、そのほかにも学校や製薬会社、食品メーカーなど多岐にわたります。
高齢化が進むに連れ、医療関係に勤務する人の需要は右肩上がりですが、とりわけ薬剤師は専門分野だけでなく、幅広い分野で活躍の場があり就職や転職に有利な職業だといえます。
しかしながら、誰もが転職に成功するわけではありません。転職に失敗しないためには、自分自身で転職の可否を踏まえ、十分な情報収集を行った上で、慎重に検討することが大切です。
薬剤師が転職する理由とは
薬剤師が転職するには様々な理由がありますが、それらを曖昧にせず、自分なりに分析しておくことが転職を成功させるコツです。
また、転職理由が多岐にわたる場合には、その優先度合いを整理しておくと、転職先に求める労働条件を精査する際に便利です。
人間関係におけるストレスを解消したい
薬剤師に限らず、転職理由として多く挙がるのが人間関係におけるストレスです。上司や同僚と意見が合わないといったものやパワハラ、セクハラなどのハラスメントによるストレスはメンタル疾患を引き起こす場合もあります。
しかしながら、転職すれば必ずしも人間関係が改善できるものではありません。人間関係が悪化した原因が、少なからず自分自身にあったのかもしれません。また、自分自身のストレス耐性が弱かったのかもしれません。
薬剤師の転職にあたっては、100%周りに責任があったと思わず、人間関係が悪化した原因をしっかりと分析し、自分自身の課題を見つけるとともに解決策を模索しておくことが、新しい職場で良好な人間関係を構築するコツです。
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ワークライフバランスを実現させたい
薬剤師として働いている方のなかには、「働き方改革」が議論される中で「毎日残業ばかりで自分の時間が過ごせない」「職場と自宅の往復だけの毎日で本当に結婚できるの?」といった、自分自身のワークスタイルに疑問を持ち始めている人も多いのではないでしょうか。
ワークライフバランスの充実は、日々の生活を充実させるにはとても重要なことですが、職場全体で取り組んでいかなければ上手くいきません。
そこで、勤務時間や休暇制度、福利厚生制度の充実など、ワークライフバランスに対するノウハウをもった職場に転職するのも前向きな転職理由です。
キャリアアップ・収入アップを目指したい
薬剤師は医師ほど高収入ではないものの、管理職クラスになれば年収1,000万円以上になることもあります。
しかしながら、非常に神経を使う仕事であり、職場によっては長時間労働や休日出勤も頻繁にあることから、仕事内容の割には給与が少ないと感じている薬剤師も少なくありません。
もちろん、転職したからといって簡単に年収がアップするものではありません。そこで、将来を見据えて管理薬剤師業務など、薬剤師に必要とされるマネジメント力やコミュニケーション力を学べる職場に転職し、徐々にキャリアアップを図ることで、収入アップにつなげようと考える薬剤師も増えています。
自分のやりたい仕事がしたい
薬剤師が力を活かせる職場は非常に多岐にわたりますが、大学を卒業後、就職してしばらく経験を積むと、自分のやりたい仕事とのギャップに気づくことも少なくありません。
例えば、ドラックストアで働いている人が「がん専門の医療機関で働きたい」「製薬会社に勤めたい」と感じることは特別なことではありません。
薬剤師の需要は、年々増加傾向にありますから、自分のやりたい分野の求人は比較的、探しやすい傾向にありますが、資格が必要なものもありますし、転職する以上「本当にやりたい仕事なのか」よく考えて行動することが大切です。
認定薬剤師・専門薬剤師になりたい
専門分野において、一定水準以上の知識と技術を兼ね備え、研修や試験合格した薬剤師は「認定薬剤師」として認定されます。さらに、職場での指導的役割や研究業績を積み、試験に合格すると「専門薬剤師」として認定されれば、大幅な処遇アップにつながります。
認定薬剤師になるには、認定薬剤師や専門薬剤師が多く配属されている職場で勤務することが近道であり、資格取得を支援している職場もありますから、こういった職場で働くことを転職理由とする人も増えています。
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薬剤師転職の現状と可否
薬剤師の転職市場は活況であり、薬剤師の転職には「追い風」が吹いていますが、転職に向く人と向かない人がいるのも事実であり、場合によっては今の職場に残った方が良い場合もあります。
したがって、「転職ありき」で転職を検討するのではなく、薬剤師転職のメリット、デメリットを把握し、その可否を見極めることが必要です。
薬剤師転職のメリット
薬剤師転職のメリットは、医師や看護師と同様に薬剤師は高度な専門性を必要とし、人材不足が顕著な職業ですから、給与などの処遇や休暇などの労働条件を今の職場よりもアップさせることができる点です。
とりわけ、病院薬剤師を経験して一定の実績を持っていると、ドラックストアの役職待遇など、高待遇の求人に応募することが可能です。そうでなくとも、求人が豊富であり、例え転職に失敗しても、再度転職に挑戦できることも大きなメリットです。
薬剤師転職のデメリット
薬剤師の職場での課題は、転職理由にもあるように「人間関係」の構築になります。転職をすればゼロから人間関係を構築することになりますから、リスクが大きくなることは間違いありません。とりわけ「転職したから人間関係が良くなる」と安易な考えを持っていると失敗する可能性が高くなります。
また、薬剤師も一つの企業に雇用されるわけですから、中途採用となると余程の実績を積んでいかない限り、早く入社した人と比べると昇進・昇給は遅くなります。また、役職待遇で入社した人は、最初からそれ相応の実績を求められますからプレッシャーは大きくなります。
薬剤師転職の可否を見極めるには
薬剤師に転職する人によっては、向き不向きがあります。その決め手となるのが、転職理由が前向きなものであるか否か、転職後に他の人よりも努力をしていく覚悟があるか否かです。
「人間関係に悩んでいる」「もっと給料をたくさんもらいたい」「休暇がほしい」というのは、転職理由として真っ当なものですが、薬剤師にとっても努力なくして良い処遇が得られるものではありません。
つまり、自分の将来を見据え、努力する覚悟を持った上で転職を考えている人は転職に向いており、現状に対する不満だけで転職しようとする人は向いていないと言えます。
薬剤師の転職で注意したいこと
薬剤師が転職を検討する上で、現状の仕事内容や職場環境だけを転職理由に考えていると、転職に失敗してしまいますので注意しましょう。キャリアプランは当然として、ライフプランを見据え、将来的にどういった働き方を目指すのかを明確にしておくことが大切です。
結婚・出産を見据えて職場を選んでいるか
薬剤師は比較的女性の多い職場ですが、結婚・出産後にどういった働き方をしたいのかを明確にした上で、転職先の労働条件や処遇を絞り込む必要があります。
例えば、出産後も正社員として働き続けたいのであれば、産前産後休暇だけでなく、育児休業や託児所設備などが整っているかも検討材料の一つになりますし、制度だけでなく実際の利用状況も確認しておくことも忘れてはなりません。
転職理由を冷静に洗い出しているか
薬剤師の代表的な転職理由は前項でも解説しましたが、転職理由は一つだけとは限りませんし、人それぞれの理由があるものです。
例えば、順調にキャリアを積んでいた薬剤師が、両親の介護のために、正社員ではなく非正規社員として働ける転職先を探すことも前向きな転職理由です。大切なことは、自分自身に向き合い、転職が自分自身にもたらすメリットとデメリットを冷静に洗い出すことです。
そして、転職先を探す際には、転職理由に合致した転職先を探すことです。求人情報を見ていると「給与」や「休暇」にばかり注目しがちですが、一番大切なのは「転職理由に合致している」ことです。
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職場の活きた情報を吟味しているか
薬剤師に限らず転職する際に最も大切なことは、活きた情報を入手することです。いくら求人広告で良いことが記載されていても、いくら面接で良い条件を示されても、職場実態が伴っていなければ意味がありません。
その一方で、活きた情報は一人では収集するのが難しいのも事実です。特に、薬剤師の転職市場は専門的であり、単独での情報収集には限界があります。
そこで、大切にしたいのが転職経験者の意見や転職エージェントからの情報です。求人広告に掲載されない情報を収集できますから必ず転職には役立ちます。
転職先は自分で決断しているか
転職経験者や転職エージェントから意見を聞くことはとても大切ですが、最後に決断するのは自分であるということをしっかりと意識しておきましょう。あまりにも周りの意見を聞き過ぎてしまい、「転職理由に合致しない職場を選んでしまった」ということは良くあります。
また、先輩や知人に転職先を紹介してもらうのも好ましくありません。この場合、仲介してくれた人の手前、少しくらい転職理由に合致していなくとも妥協せざるを得ない状況に追い込まれてしまうリスクがあり、結果、転職先に馴染めなくとも辞められなくなってしまいます。
薬剤師の転職における失敗例
せっかく転職に踏み切ったのに、いざ新しい職場で働いてみると、「思っていた職場ではなかった」ということは少なくありません。なお、薬剤師転職の失敗については、代表的なパターンがいくつかあります。
給与などの待遇を優先しすぎてしまった
30代~40代といった働き盛りの薬剤師に多いのが、給与や役職といった待遇面を重視して転職を決意するパターンです。
この年代は、子供の将来を考える時期にあたり、待遇面を求めて転職する人が多いのですが、待遇が良い分、長時間労働を強いられたり、厳しい営業ノルマを求められることも少なくありません。
給与や待遇面だけでなく、ワークライフバランスの面も考慮し、労働条件全体のバランスを見て判断することが大切です。
自分のスキル以上の職場に転職してしまった
薬剤師の職場は非常に多岐にわたることから、求められるスキルも職場によって異なります。
例えば、ドラックストアに勤めていた人が、専門分野の病院に転職することも可能ですが、これまで培ってきた経験やスキルが大きく異なると、新しい仕事についていけなくなります。
これまでと大きく異なる分野に転職する場合には、転職経験者や転職エージェントなどから具体的な仕事内容について情報収集を行い、自分自身の経験やスキルと照らし合わせて転職の可否を判断すべきです。
面接時の仕事の内容と異なっていた
職場の雰囲気や残業の有無、休暇の取得状況などについて、面接で聞いていたことと現実が大きく異なるといったことは、決して珍しいことではありません。例えば、ワークライフバランスの充実を求めて転職したものの、毎日が残業である上、休日出勤まで命じられたのでは、ストレスが次第に大きくなり長続きしません。
求人情報には休暇制度や福利厚生制度など、「制度」については明記されていますが、取得率などは明記されていないことがほとんどですから、在職者や転職エージェントなどから職場実態にかかる情報収集が大事になります。
誰にも相談せずに転職先を決めてしまった
最終的に転職先を判断するのは自分自身ですが、自分一人で判断していると、転職に必要なチェックポイントを見逃してしまうことや、一つの労働条件に固執してしまい全体が見えなくなるなど、誤った方向に進んでいても軌道修正が効かなくなってしまいます。
薬剤師転職に失敗しないためには、転職経験者や転職エージェントなど、薬剤師の転職に関するノウハウを持った人に相談することを忘れてはなりません。
薬剤師転職で失敗しないポイント
薬剤師転職で失敗しないためには、なぜ転職が必要なのか、自分が将来どういった働き方をしたいのか明確にし、それに合致した職場を探し出すことです。
そのためには、信頼できる情報源を確保することが大切であり、最後は自分自身で決断する覚悟を持つことが必要です。
転職理由を精査する際のポイント
薬剤師の転職理由は前向きなものであるとともに、将来を見据えたものでなければなりません。転職を検討する際には、曖昧にせず転職理由を精査しておきましょう。
・自分自身がどんな仕事をしたいのかを明確にする
・将来的に自分が求めるキャリア、ライフスタイル働き方を具体的にイメージする
・今の職場に対する不満やネガティブな理由を転職理由とはしない
薬剤師として、今後どのように働いていきたいのか、何を目標とするのかを明確にしておくことが大切です。
転職先の条件を整理する際のポイント
転職理由が精査できたら、それに合致した労働条件や処遇を整理します。その際には、一つの労働条件や処遇に固執することなく、様々な角度から検討しましょう。
・給与面や勤務時間などの労働条件や処遇ばかりに気を取られない
・自分のスキルを大きく上回る職場への転職は慎重に検討する
・転職先の労働条件などは優先順位を定め、妥協する柔軟性も持つ
転職先に関する情報を収集する際のポイント
薬剤師転職に失敗する人の多くは、情報収集が不十分であったことが原因です。単に求人情報だけで判断するのではなく、活きた情報を収集しましょう。
・信頼できる転職エージェントや転職経験者を見つける
・転職先は自分一人で決めるのではなく、周りの意見も参考とする
・転職先の離職率、休暇の取得率、経営状況といった活きた情報を収集する
転職先を決断する際のポイント
薬剤師転職を成功させるには、できる限りたくさんの情報を収集することが大切ですが、転職先を決断するのは自分だという覚悟を強く持つことです。
・「転職ありき」ではなく今の職場に残ることも検討材料とする
・”大学病院”などブランドだけで転職先を選ばない
・転職エージェントに頼りすぎず、自分自身で転職先は決断する
薬剤師におすすめの転職エージェント
薬剤師の転職活動には、一般的な転職エージェントは適しません。
薬剤師の業界は専門的な業界であり、一般的な給与所得者などが企業に転職する場合とは、かなり違った状況を行う必要があります。そのため、薬剤師の転職にあたっては、専門エージェントを活用するのがおすすめです。
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まとめ
薬剤師転職は、求人数も数多くあり、転職先も多岐にわたることから、簡単に処遇アップにつながると思いがちですが、前向きで将来を見据えた転職理由がなければ、転職先に求める労働条件などをイメージすることもできません。
また、前向きで将来を見据えた転職理由であっても、活きた情報を収集しないで転職してしまうと、自分がイメージしていた職場とはかけ離れていることもあるので注意が必要です。
したがって、薬剤師転職を成功させたいのであれば、まずは転職理由を精査し、自分が求める職場の労働条件などを明確にすることが大切です。その上で、活きた情報を収集し、最後は自分で転職先を決める覚悟を持ちましょう。