転職市場の動向については、景気の回復や少子高齢化の影響により「売り手市場」だと言われていますが、職種によってずいぶんと事情が異なります。
したがって、転職で成功するためには、それぞれの職種における転職市場の動向を把握するとともに、どういった人材が求められているのかを的確に認識して行動することが大切です。
事務職における転職市場の動向
事務職は景気の動向に関わらず、一定の求人数がある職種ですが、女性を中心に求職者も多いことから、厚生労働省が発表している2018年5月の一般事務の有効求人倍率は0.31倍と狭き門となっています。
したがって、一般事務にこだわらず、コールセンターのオペレーターなどオフィスワーク全体に目を向けるか、労務や法務、雇用管理といった専門的なスキルや資格を必要とする業務内容に着目して転職先を探すことが得策です。
事務職において求人数が増加傾向にある職種としては、インターネット業、商社・貿易会社などがあげられます。ただし、インターネット業は高いパソコン技術、商社・貿易会社では外国語のスキルが高いことが条件となります。
事務職の転職に有利な資格・スキル
事務職の転職に有利な資格として、最もポピュラーなものでは秘書技能検定です。秘書としてのスキルだけでなく、ビジネスマナーや一般常識を身に付けることができますから、一般事務を目指す人は必須の資格です。
中堅社員として転職するのであれば、社会保険労務士やビジネス実務法務検定がおすすめです。近年、労働問題は様々な場面で取り沙汰されていますから、専門的な知識を持つ人材は企業としてもほしい人材です。人事・労務管理部門を目指すなら、是非とも取得しておきたい資格です。
その他に事務職に有利な資格には、PCのスキルがアピールできるMOSや英語の実力が証明できるTOEIC、経理に必要な日商簿記検定などがあります。
事務職の転職に求められる人材とは
事務職は、社内外の人との関わりを大切にしながら業務を行っていますので、ビジネスマナーだけではなく、コミュニケーション力が求められます。
また、ミドル層においては事務能力だけではなく、チームの中核として社員に対するマネジメント力やリーダーシップが求められています。とりわけマネジメント力の中でも、時間管理や業務の進捗管理は職場の生産性に大きく関わる部分ですから、高いスキルが必要とされます。
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営業職における転職市場の動向
営業職の転職市場では、景気の回復を背景の求人数は軒並み増加傾向にあり、厚生労働省が発表した2018年5月の有効求人倍率は1.75倍です。新規事業を立ち上げる企業も増えており、30代前半までの求人はもちろん、30代後半から40代のミドル層の求人が増えています。
営業職の求人が増加傾向にある業種として注目されているのが、人材業界があげられます。人材業界は、各企業のニーズに合った人材を募集し雇用管理する業務であり、企業の人事部門での職務経験がある人は要チェックです。
その他にも、様々なサービスが展開されているIT関連や景気の回復とともに上昇気流に乗っている不動産業界も求人数を伸ばしています。
営業職の転職に有利な資格・スキル
営業職の転職に有利な資格には基本事業技術者があげられます。これはITパスポートの上位資格にあたるものですが、情報・通信などの基礎理論、プログラミング、セキュリティなど幅広い知識が必要です。簡単な資格ではありませんが、質の高い営業活動を行うためには不可欠なスキルです。
中小企業診断士も営業職にはおすすめの資格です。中小企業診断士の肩書きがあることで、クライアントの信頼度は格段にアップしますし、経営全般に幅広い知識を得ることで、営業活動にも良い影響を及ぼします。
営業職の転職に求められる人材
営業職の転職者に求められるのは、成長意欲や積極性です。企業経営において営業は非常に重要なポジションであり、営業に活力がないと企業全体に活力が生まれません。それだけに、営業職には積極的にアクションを起こし、常に向上しようとする成長意欲の旺盛な人材が求められています。
また、ミドル層に求められるのは、職場のリーダーとしての経験やスキルです。特に人材育成には、各企業とも頭を悩ませているのが実態であり、ミドル層にはこういった手腕を発揮してほしいのです。
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医療・介護・福祉における転職市場の動向
医療・介護・福祉における転職市場の動向としては、少子高齢化を背景に慢性的な要員不足が続いており、厚生労働省が発表した2018年5月の有効求人倍率は、介護サービスで3.09倍と非常に高い水準を保っており、転職者には有利な状況が続いています。
とりわけ、介護サービスについては高齢化とともに、ますますニーズが高まることが予測されています。そこでまずは、人材を雇用し、入職後に育成するスタイルをとっている企業も少なくありません。したがって、未経験や資格がなくとも求人数が多いのが特徴です。
医療の分野では看護師の不足が顕著ですが、国家資格が必要であるため、人材確保に苦慮しています。そこで、資格を持ちながら育児や介護のためにフルタイムで働けない人をターゲットに短時間社員制度を導入するなど、いわゆる潜在的な労働力の発掘に力を注いでいます。
医療・介護・福祉の転職に有利な資格・スキル
医療関係においては看護師の資格は必須ですが、高い労働条件を求めるのであれば認定看護師や専門看護師は持っておきたい資格です。
これらの資格取得者は、医療機関としても数多く配置していたい人材です。最近では、入職後に研修などの支援を行う医療機関もありますから、こういった医療機関に応募する転職者も増えています。
介護サービスではヘルパーや介護福祉士が一般的ですが、キャリアアップのモデルとしてケアマネジャーは処遇の高い求人が数大きくあります。ケアマネジャーは、資格取得者が少なく、今後さらに需要は高まりますから、介護業界で働くなら是非とも取得しておきたい資格です。
医療・介護・福祉の転職に求められる人材
医療の分野においては、医療技術が進化しており、より高度なスキルが求められるとともに、医師と看護師が一つのチーム医療が主流になりつつありますから、協調性や細かな気遣いができる人材が求められています。
また、介護・福祉の分野では、少子高齢化が加速していく中で、後期高齢者医療も在宅にシフトしていることから、これまで以上に高齢者や家族などとのコミュニケーション力や人柄が重視されています。
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IT・エンジニアにおける転職市場の動向
IT・エンジニアにおける転職市場は、これまでのシステム改修や刷新需要に加えて、様々なサービスが生まれていることから、厚生労働省が発表した2018年5月の有効求人倍率は、2.44倍と高い水準を維持しています。
新たなサービスとして注目されているのは、金融業界のFintechや製造業界のIOS、流通業界のオムニチャンネルといった、これまでITでカバーしきれなかった分野であり、今後もこの傾向は続くことが予想されていますから、IT・エンジニアに対する求人数の伸びも期待できます。
そのためIT関連企業だけでなく、金融機関や製造業、流通業界にもエンジニアとしての求人が増えており、転職先の業種は非常に幅広くなっています。
IT・エンジニアの転職に有利な資格・スキル
ITの分野では、基本技術者は最もベーシックな資格ですから必須だといえます。さらに上位の応用技術者を取得しておけば、他の応募者との差別化が図られる上、転職先の幅は大きく広がるでしょう。
エンジニアの分野では、その職種により必要な資格も様々ですが、情報セキュリティスペシャリスト、ネットワークスペシャリスト、データベーススペシャリスト、エンベデッドシステムスペシャリストといった基本的な資格は、様々な場面で応用が効きますので、是非とも取得しておきたいものです。
IT・エンジニアの転職に求められる人材
IT・エンジニアの分野というと、一人でコツコツと作業を行うイメージがありますが、サービスが多岐にわたることから、クライアントとのコミュニケーションが大切です。また、クライアントからの要望に的確に対応していくには、様々な業界に精通していることも必要となります。
また、システム開発においてはチームで対応することが大半ですから、ミドル層においてはチームを引っ張っていく強いリーダーシップやスケジュール管理能力が求められます。
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物流・運輸における転職市場の動向
物流・運輸における転職市場は、燃料コストの高騰により業界全体の停滞が危惧されたものの、好景気に支えられ、厚生労働省が発表した2018年5月の輸送・機械運転の有効求人倍率は、2.39倍と高水準を示しています。
最近の傾向として、インターネット通販の定着による個人物流の増加は業界全体を活性化させていますが、同時に要員不足は顕著であり、最繁忙期においては引受制限といった措置が取られるほどです。
また、物流・運輸業への転職で注目すべきは3PLです。これまでの配送・保管といった業務に加えて梱包や配送時の顧客対応を担う3PLは多くの企業に注目されており、今後さらにニーズが増加することが予測され、求人数の増加も期待できます。
物流・運輸の転職に有利な資格・スキル
物流・運輸の職場では安全最優先の業務を遂行することが大きなテーマとなっており、従業員数によって、安全管理者や衛生管理者の配置人数が定められていますから、取得しておくと転職に有利です。
また、業務管理を行う面では、運行管理者やロジスティックオペレーションは取得しておきたい資格です。また、現場で作業に当たるにはフォークリフト運転技能者も取得しておくと転職には有利です。
物流・運輸の転職に求められる人材
物流・運輸業に求められるのは、職場でー決められたルールに忠実に従って、安全かつ確実な業務を遂行する人物です。
また、荷物の配送や3PLの分野においてはシステム化が急速に進んでいることから、情報システムに関する知識やスキルを持ち合わせていることが求められますが、さらに他の社員にわかりやすくレクチャーできる能力も大切です。
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販売・接客業における転職市場の動向
販売・接客業の転職市場は、景気の回復を背景に求人数が求職者数を上回る状況が続いており、厚生労働省が発表した2018年5月の商品販売の有効求人倍率は1.95倍です。
そのため、新規採用だけでは人材が集まらない状況が続いており、積極的に中途採用に取り組む企業が増えています。ただし、都市部と過疎地の2極化が顕著であり、求人は都市部や観光地、郊外に集中しています。
とりわけ郊外は大型ショッピングセンターやアウトレットモールの出店が相次いでおり複数の企業が雇用確保に力を注いでおり、好条件の求人が多くなっているのが特徴です。
販売・接客業の転職に有利な資格・スキル
インターネット通販が業績を伸ばす中で、販売・接客業に求められるのは、お客様とのコミュニケーション能力です。とりわけ、消費者のニーズは年々高くなっていますから、迅速かつ正確な対応が求められます。
そこで、注目されているのが、お客様の商品に対するクレームや意見を聞き、企業との間に入って円滑に解決に導く消費生活アドバイザー、第2類医薬品の販売に必要な登録販売者、ライフスタイルや予算、家族構成から最適な家電品を紹介する家電製品アドバイザーなどです。
販売・接客業の転職に求められる人材
販売・接客業において求められるのは、単にモノを売るのではなく、短時間でお客様のニーズを的確に掴みどうすれば満足していただけるかを考えて提案する力です。
さらに、今後ますますの顧客の高齢化が進んでいきますから、高いコミュニケーション能力と洞察力、そして何よりお客様の立場に立って行動できる思いやりの心が求められます。
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建設・土木における転職市場の動向
建築・土木業界の転職市場では、業界全体が人材の不足及び高齢化に悩まされていることから、若年層を中心とした労働力確保に努めています。厚生労働が発表した2018年5月の有効求人倍率においても5.35と極めて高いことからも、建設・土木業の人材不足の深刻さが伺えます。
そのため、有資格者や経験者の転職が有利であることの変わりありませんが、未経験者においても入社後に資格が取れるよう、研修制度などの充実が図られている企業も少なくありません。
また、最近の傾向として特徴的なのは、老朽化した建築物の改修やリノベーションに関わる業務や、オフィスビル等における電気設備、空調・配管といった設備管理やメンテナンスに関わる業務についても求人が増えていることです。
建設・土木への転職に有利な資格・スキル
建築の分野で業務に携わるには、様々な国家資格が必要ですが、とりわけ一級建築士は取得率も高く必須であり、転職には非常に有利です。その他では構造設計一級建築士や一級建築施工管理技士も取得していると転職先の幅が広がります。
土木分野では一級土木施工管理技士が一般的ですが、実務を行う上では技術士も外せません。さらに、コンクリート診断士も実務を行う上では非常に役立つ資格です。
建設・土木の転職に求められる人材
建築・土木業界では、未経験者も積極的に採用しているとはいえ、決して水準を下げているわけではありません。チームでの仕事に不可欠なコミュニケーション能力や熱意を持って仕事に取り組む姿勢が重要視されます。
一方、ミドル層においては、有資格者であることが前提に職場のリーダーになれる人材が求められています。したがって、コミュニケーション能力はもとより、スケジュール管理や安全管理、品質管理能力が必要です。
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まとめ
転職市場の動向は、少子高齢化や景気回復を背景に、各企業とも要員不足に悩まされていることから「売り手市場」となっており、これまで厳しいとされてきたミドル層においても多くの求人があるのが特徴的です。
しかしながら、応募をすれば採用されるといった状況ではありません。労働人口は減少の一途を辿っていることから、各企業とも少ない人数で効率的に業績を上げることを念頭に、優秀な人材を求めています。
とりわけ、転職者には即戦力としての人材が求められていますが、職種によって求められる人材に違いはあるものの、高いスキルや豊富な経験、有資格者であるだけでなく、高いコミュニケーション力が重要視されています。