看護師の転職活動は一般的な事務職・営業職などとは異なります。
看護師は専門性の高い職種であり、さらに、医療業界自体の特殊性も考慮する必要があります。
看護師の転職の可否については、様々な意見が交わされていますが、その背景には、本格的な高齢化社会を迎えるにあたり、医療施設や介護施設における看護師の不足が深刻な問題があります。
そこで、医療機関や介護施設では給与面だけでなく、長時間労働の是正や休暇の取得率の向上など、看護師が働きやすい職場環境づくりを提案し、潜在的な労働力の掘り起こしを含めた雇用対策を行っています。
しかしながら、旧態依然とした職場も数多く残っていることから、転職に失敗する人も少なくありません。そこで、看護師の転職活動を成功させるためのコツや注意点などについてまとめてみました。
なお、看護師は、「看護士」と表記されることもありますが、今回は、資格の名称を重視して、「看護師」とさせて頂きました。
看護師が転職する理由は?
看護師の職場は「残業が多い」「重労働である」「人間関係が難しい」といったイメージが先行しており、これらが転職理由になると考えられがちです。
しかし、看護師の転職理由は職場環境だけではなく、キャリアアップや他分野で働きたいなど非常に多岐にわたります。もちろん、転職理由や、転職によって実現したい目標に応じて、転職活動の進め方は変わってきます。
看護師が転職を成功させるには、まずは自身の転職理由、実現したい目標を明確にすることから始めましょう。
以下では、看護師の転職で良く見られる事例をご紹介します。ご自身の転職理由を明確するうえでの参考にして下さい。
ワークライフバランスを大切にしたい
看護師の職場においても、様々な「働き方」が求められており、ワークライフバランスを大切にできる職場に転職したいとする人が増えています。
また、「自分の時間を大切にしたい」といった看護師だけでなく、育児や介護のため長時間労働や夜勤が困難となったことから、退職を余儀なくされた看護師もいるでしょう。
こういった看護師には、「仕事を続けたい」という思いが強く、労働条件さえ合致すれば職場復帰をしたいと考えている方もいます。
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認定看護師などのキャリアアップを狙う
近年の医療技術の進歩には目覚しいものがありますが、このことに伴って診療科目の細分化が進み、看護師にも専門的なスキルや知識が求められるようになりました。
こういった現状に対応するため、看護師の資格認定制度が設けられ、特定分野に特化したスキルや知識を持つ認定看護師・専門看護師は好条件の処遇が約束されていることから、看護師のキャリアアップのモデルとなっています。
また、医療機関においてもスキルの高い看護師を数多く雇用したいとの考えから、認定看護師・専門看護師を目指す転職者を受け入れて育成に力を注いでいます。
そのため、キャリアアップを狙った転職活動を行う看護師も増加する傾向にあります。
他の分野の仕事がしたい
看護学校などを卒業して看護師となり様々な経験を積むと、自分のやりたい分野が明確になります。しかしながら、総合病院などでは希望する診療科に配属されないことが多々あります。
また、高齢化が進むに連れ、医療期間だけでなく介護施設における看護師の需要が高まっていることから、介護施設で働きたいという看護師も増えており、転職に踏み切る看護師が増えています。
人間関係に疲れたのでリセット
看護師の職場で大きな課題となるのが人間関係です。看護師間だけでなく、医師との関係も重要になります。また、大学病院などの大規模医療機関では、医師よりも看護婦長が絶対的な権限を持っていることもあり、その間に挟まれて、看護師が右往左往することもあります。
さらには、医師によるセクハラや看護師間のパワハラも一部では横行している実態もあり、本来の看護業務よりも職場の人間関係に気を使うようになり、思うような仕事ができなくなることから転職を検討する看護師も少なくありません。
給与面での処遇をアップさせたい
看護師の平均年収は20歳から24歳で約300万円であるのに対し、同年代のOLは約304万円ですから、過酷な労働条件である割には低収入であることがわかります。
また、個人経営の病院と大学病院では大きな差があり、前者が約390万円であるのに対し、後者は約490万円と100万円の差があります。
特に20代後半から30代前半の看護師は経験豊富でスキルも充実していることから、より高額な給与を求めて転職する傾向にあります。
看護師の転職の可否
最近では看護師の労働条件や処遇が改善されたとの報道も数多くあり、看護師転職は「必ず成功する」といったイメージがあります。実際、看護師の転職マーケットも活発になっており、看護師転職を専門的にサポートする転職エージェントも現れています。
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しかし、看護師の転職活動方法には特殊な部分もあります。そのため、看護師転職のメリットやデメリットを把握して、転職可否を判断しないと失敗することもあります。
看護師転職のメリット
看護師が他の職種と比較して転職しやすい理由の一つに「国家資格」を取得していることが挙げられます。
看護師という国家資格は国が認めたスキルですから、転職に有利に働くことは間違いなく、最低限の処遇が保障されることは大きなメリットです。
また、看護師の絶対数が不足していることも転職には有利に働いています。
少子高齢化が進む日本の状況から、今後、労働人口が増えることは考えにくく、潜在労働力を含めた雇用確保は医療機関・介護施設にとっては大きな課題です。
そのため、看護師を取り巻く労働条件や処遇は右肩上がりになることが予想されます。
以上のような要因を勘案すると、看護師は転職を上手く活用することで、現状よりも好待遇を得られる可能性が高い職種と言うことができます。
看護師転職のデメリット
看護師転職のデメリットは、求人数が多いことから、様々な労働条件に目移りがしやすく、一旦転職しても「いつでも転職できる」と思ってしまうことです。
しかしながら、いくら看護師という職種であっても、転職を繰り返していると、採用されにくくなりますから注意が必要です。
また、看護師の要員不足が解消されたわけではありませんから、同じ労働条件でも職場環境に大きな差があることです。職場環境については、求人情報だけで確認することは難しく、情報収集をしっかり行わないと転職にはリスクがつきまといます。
看護師転職の可否を見極める方法
自身の看護師転職の可否を見極めるには、前項に挙げたメリットやデメリットを踏まえた上で、自分にとって「なぜ転職が必要なのか」を明確にすることです。
転職によって実現させたい目標、もしくは改善したい問題点を明確にして、その点を留意しながら転職活動を進めていく必要があります。
看護師転職で失敗する人の特徴は後述しますが、少なくとも転職に対して前向きな動機を持っていること、そして何より看護師の仕事が好きである人は、転職が可であると考えて良いでしょう。
看護師転職で失敗する人の特徴とは?
転職について真剣に考えて、その可否について見極めたにも関わらず、思い描いたとおりの転職ができない看護師も少なくありません。
このような看護師転職に失敗する人には、ある共通の特徴があります。自分自身がその特徴に当てはまらないか確認しておきましょう。
失敗原因① 誰にも相談せずに転職先を決めた
看護師に限らず転職は人生の転機ですから、その可否については相当に悩んでしまうものです。こんな時、自分一人で考えていると視野が狭くなってしまいがちです。
誰にも相談せずに、1人だけで悩んでいると、偏った考え方のまま転職先を決めかねません。
転職に失敗する人の多くは、誰にも相談しないで転職先を決めてしまう傾向にあるため、転職した後で、転職先が理想の職場とかけ離れていることを気付くことがあります。
失敗原因② 転職の理由を見失いがち
看護師が転職する理由は、前向きなものであるとともに、将来にわたってのライフスタイルやキャリアまで考えたものでなければなりません。
しかしながら、転職活動には時間もかかりますし、考え・悩むことはたくさんあります。
こういった転職活動のなかで転職先を探していると、様々な求人情報に目移りしてしまい、当初の転職理由には合致しない転職先を選択してしまい、後々後悔することがあります。
看護師の転職活動においては、当初に定めた目標を振り返りながら進めていくことが大切です。
失敗原因③妥協して転職先を決める
転職先を探している時は、将来に対する不安も大きくなり、出来る限り早く決めてしまいたいと思うものです。そうすると、多少は転職理由や理想とする労働条件に合致しなくとも、転職先を決めかねません。
転職は人生の中でも大きな出来事ですら、安易に妥協するものではありません。最初は小さな妥協かもしれませんが、やがて耐え切れなくなり再度転職先を考えるようにもなりかねません。
失敗原因④早々と候補を絞り込む
同じ労働条件の医療施設や介護施設であっても、人材の育成方針や研修体制、休暇の取得率、人間関係など、職場の実態は個々に異なります。
しかしながら、看護師の転職に失敗する人は、条件に合致した候補が一つ見つかると、それ以上探そうとせず、他の医療機関の労働条件などを比較しないで転職先を決めてしまうことがあります。
もちろん、すぐに決めてしまったとしても、上手くハマれば問題ありませんが、リスクが大きく失敗する可能性が高くなります。
失敗原因⑤一つの労働条件に固執する
看護師の求人情報を確認する場合、真っ先に注目するのが労働条件です。
労働条件の優先度合いは、個々によって異なるものですが、転職に失敗する人は一つの労働条件に固執しがちです。
例えば、年収を第一に考えている看護師が、その部分だけを見て転職先を決めてしまうと、実は休暇が極端に少なくて長続きしないことも考えられます。
年収ももちろん大切ですが、労働条件は様々な項目を複合的に勘案、比較することが大切です。
看護師転職でよくある悩み
転職理由を明確にし、様々な労働条件を吟味して転職したにも関わらず、転職後に悩みを持つ看護師も少なくありません。そこで、看護師が転職に抱える代表的な悩みについてまとめてみました。
即戦力を求められるプレッシャー
看護師の転職活動で特に重要と言えるポイントです。看護師の場合、新卒と転職者の大きな違いは経験の有無です。
そのため、転職者には即戦力としての働きを求められることが多く、仕事に慣れるまではそのプレッシャーに押し潰されそうで辛いと感じている転職者も少なくありません。
とりわけ、出産などでブランクのある看護師は、電子カルテや最新の医療機器などの扱い方にも慣れておらず悪戦苦闘するケースが目立っています。
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十分な教育・研修が受けられない焦り
求人情報を見ていると、「教育・研修制度が充実」となっていても、実際には十分な研修が受けられないことで焦りを覚える看護師も数多くいます。
看護師の研修については、院内研修を始め院外研修、OJT、プリセプター制度の挿入やクリニカルラダー教育などがありますが、忙しくて回数が極端に少なかったり、マニュアルを配布しただけで内容が伴わないケースもあります。
面接時に聞いた職場環境が実際とは異なる
面接時などに聞いた病棟の状況や福利厚生の内容が、実際の職場では大きくかけ離れていることに気付きジレンマを抱えている転職看護師もたくさんいます。
とりわけ休暇については、産前産後休暇制度を導入するなど、制度そのものは充実していても、要員不足のため極端に取得率が低く形骸化していることもあります。
人間関係に馴染めないことに対する憂鬱
人間関係をリセットしたくて転職を決意したにも関わらず、新しい職場でも人間関係に馴染めないまま、時間だけ過ぎ去っていることに悩む転職者も少なくありません。
また、極端なパワハラ行為はなくても、転職者を受け入れない職場風土が依然として残っている職場もあります。新たな職場環境に順応できないと、休憩時間に話す相手もいない状況に追い込まれ、再度、転職を考えるも「また失敗したら…」と考えてしまい、憂鬱な日々を送らざるを得ないのです。
看護師転職に関する注意点
看護師の転職を成功させるためには、転職理由を明確にするとともに、転職先の職場環境に関する情報収集を怠らないことが大切です。
さらには、探し出した転職先が、転職理由や理想の労働条件と合致しているかシビアに判断する必要があります。
転職理由は前向きなものであるか
看護師が転職を決意するには様々な理由がありますが、少なくとも前向きな理由であるか否かは再確認しておく必要があります。
例えば、人間関係を転職理由に挙げる場合、単に周りの人と合わなかったといった理由ではなく、自分自身に非がなかったのか、あったとすれば転職先ではどういったことに心がけて人間関係を構築していくのかを考えておく必要があります。
新たな職場環境で1からやりなおすという考えはあって良いものですが、もし自分に失敗の原因があるなら、その改善方法を考えておかないと、再度失敗する原因にもなりかねません。
その上で、常に転職理由に合致した候補であるかをシビアに判断するとともに、転職理由が複数にわたる場合には優先順位を定め「何が一番大切なのか」をハッキリさせておくことが不可欠です。
労働条件を優先度合いで洗い出す
転職先に求める労働条件は個々に異なりますが、一つに傾注してしまうと、非常にバランスの悪いものとなってしまいますから、優先度合いを明確にして洗い出しておくことが大切です。
なお、一般的にチェックしておきたい労働条件は次のとおりですから、個々に追加・修正し優先順位をつけると良いでしょう。
- 年収
- 休暇制度及び取得率
- 1か月の平均残業時間
- 夜勤の有無
- 教育・研修制度
- 福利厚生制度
候補となる医療機関などを見学しているか
求人情報では、給与や休暇などの労働条件は記載されていますが、施設の状況や最寄り駅までの周辺環境、院内の雰囲気まではわかりません。
そこで、事前に候補となる医療施設や周辺環境を事前に見学しておくと安心です。とりわけ院内の雰囲気については、そこで働いている看護師の働きぶりや表情を見るだけでも多くのことがわかりますし、患者さんの表情からも院内の様子をうかがい知ることができます。
看護師という職種は、転職候補先となる医療機関の職場の雰囲気を事前に見れるというメリットがありますので、最大限活かすことが大切です。
転職を経験した人などに相談
転職を決めるのは自分自身ですが、そのプロセスにおいて様々な人の意見を聞くことはとても有益です。とりわけ、転職を経験した人からは活きた経験談を聞くことができますからとても参考になります。
看護師という専門的な職種ではなおさらと言えるでしょう。
ただし、相談相手に個人的に転職先を紹介してもらうのは得策ではありません。
友人や知人、先輩看護師などから転職先を紹介されると、多少、自分の求める労働条件に合わなくとも、断りづらいなどの理由で妥協しがちになります。
結果、看護師の転職に失敗する原因にもなります。
転職サイトのコンサルを利用
看護師専門の転職サイトも数多くあり、様々な求人情報が掲載されていますが、こうしたサイトには「キャリアコンサルタント」が存在しており転職希望者の相談を受けています。
キャリアコンサルタントは実際に転職した人からも多くの情報を得ていますので、職場の人間関係や残業・休暇取得の実態など職場実態にかかる情報も把握しています。
キャリアコンサルタントは転職を成功させることで報酬を得ていますが、「失敗する転職」で転職先から早期に退職すると報酬が貰えないのが通常です。
そのため、看護師の転職が失敗しないように、可能な限りの調査や、相談に対応してくれます。
さらに、サイト上には掲載されない非公開求人の情報を持っている場合もありますので、キャリアコンサルタントには遠慮せず相談して懇意になり、より実態に即した情報を得ることが大切です。
まとめ
看護師は絶対数が不足している上、高度なスキルを持った認定看護師などはさらに需要が大きくなることから転職に有利な条件が揃っています。
しかしながら、看護師転職のメリットやデメリットを把握した上で、自らの転職の可否を見極めることが大切ですし、そもそも前向きな転職理由で決断しないと失敗につながります。
また、看護師のなかには、転職の可否を見極めた上で転職したにも関わらず、転職後に悩む人も少なくありません。
こうした転職者の悩みの多くは、事前に調べておいた労働条件と職場実態が大きくかけ離れていることに起因するものですが、事前の情報収集が不足していたことが原因です。
看護師の転職を成功させるには、転職に何を求めているのかを精査し、それに合致した労働条件を明確にすることです。その上で、ネットなどにある求人情報だけでなく、職場実態など活きた情報を的確に収集し、その転職先で「自分がやりたいことが実現できるのか」を見極めることが重要です。