医師の転職が年々増加する傾向にあります。
急速な高齢化や医療技術の高度化により、医師の需要は高まるばかりですが、医師の不足は深刻です。医師の長時間労働や休暇が取得できないなど労働条件は悪化の一途を辿っています。
こういった状況の中で、医師不足の解消策の一環として、医療機関においても様々な働き方が受け入れられる職場が増えており、医師が転職しやすい環境が整ってきています。
そこで、医師転職の理由や、医師が転職に失敗しないための対処法についてまとめてみました。
医師が転職を考える理由
以前であれば、医師が転職を考える理由は、年収やキャリアアップが大半でしたが、最近では働き方が多様化する中で転職理由も多岐にわたっています。そこで、医師が転職を考える理由について考えてみましょう。
年収を増やしたい
医師と言えば高額年収であることが知られていますが、その相場は年齢や診療科によっても異なり、勤務医の場合だと約1,600万円～1,700万円が相場です。
ただし、この金額はあくまでも平均であり、概ね45歳～55歳の医師が得ている金額です。これに対して働き盛りである20代後半から30代前半の平均は1,000万円前後ですから、一般のサラリーマンと比較すると決して高い金額ではありません。
そのため、収入アップを医師転職の理由にする人も少なくありません。
具体的には「若いうちにある程度の貯蓄を残しておきたい」「過酷な労働条件に割に給与が少ない」といった理由があげられます。医師転職を検討するのは30代後半から40代前半の人が多く、年収1,500万円に到達しているか否かが、転職を検討するかどうかの一つのボーダーラインとなっています。
ワークライフバランスを大切にしたい
労働者の「働き方」が取り沙汰される中、ワークライフバランスを大切にしたいというのは、医師に限らず様々な職種で転職理由に上げられています。
しかしながら、医師の場合、他の職種と事情が異なるのは、もともと年収水準が高いので、週に3～4回勤務するだけでも生活が成り立つ点です。
そのため「子供と一緒にいる時間を増やしたい」「親の面倒を見たい」「自分の時間を大切にしたい」という考え方が医師にも浸透しつつあるだけでなく、収入面においても実現可能な転職理由です。また、医療施設においても、医師不足を解消するために、様々な働き方に対応できる求人が増えています。
病院経営を学びたい
将来は独立して開業を目指している医師も少なくありませんが、開業医は人材育成やマネジメント、病院経営に関するスキルを習得しておく必要があります。
しかしながら、医者にとって、大学病院などの大規模病院に勤めていると、先端の医療技術は学ぶことはできますが病院経営について学ぶことはできません。
そこで、将来に備えて大規模病院から、個人経営の医療施設に転職して病院経営を学びたいという医師もたくさんいます。転職者を受け入れる医療施設も、大学病院など大規模病院で培ってきた技術を取り入れることができますから、双方にメリットがあるのです。
人間関係を見つめ直したい
以前ほどではないにせよ、大学病院などの大規模病院では、一部では人事などを巡った派閥争いが残っており、人間関係に疲れたことを転職理由にあげる医師も数多くいます。
また、医師固有の課題として、看護師との人間関係もあります。とりわけ大学病院などの大規模病院では、若手医師よりも看護師が実権を握っているケースもあり、医師としての業務よりも人間関係に疲れてしまい、人間関係に気を使わない職場で働きたいと考える医師が増えています。
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キャリアアップを図りたい
医大卒業後インターンを経て勤務医となり、様々な患者や病気などと対峙していると、自分のやりたいことが明確になってきます。特にここ数年の医療技術の進化は目を見張るものがあり、専門的な知識やスキルを必要とする場面に数多く直面します。
そうすると、勤務医として大学病院など大規模病院で、幅広い医療行為に携わっていくよりも、専門医や認定医の資格を取得し、その分野に特化した医療機関に転職してキャリアアップを図りたいという医師も増えています。
医師転職に失敗する人の特徴
医師転職と言えばキャリアアップが約束されたものであり、失敗などあり得ないといったイメージで捉えられがちですが、実は失敗するケースも少なくありません。そこで、転職に失敗する医師に共通する特徴について考えてみましょう。
一つの労働条件に固執
医師や、医療業界に関わらず、どういった職種でも転職を決める際には、労働条件が大切になります。
せっかく転職したのに、以前よりも職場環境が悪化してしまうと、何のために転職したのかわからなくなります。そのため転職を検討する際には、よりよい労働条件を求めるものですが、一つの労働条件に固執するのは得策ではありません。
転職に失敗する人は、往々にしてこの傾向が強く、職場環境を確認せず年収だけを求めて転職してしまったため、実際に転職してみると残業が極めて多いことがわかり、結果、再度転職先を探すといったこともあります。
医師も例外ではありません。まだまだ職場環境の悪い職場も少なくありませんので、職場環境を良く確認して、転職先を検討する必要があります。
転職理由を見失いがち
前項でも触れているとおり、医師転職の理由は多岐にわたっていますが、転職に失敗する人は、様々な求人情報を見ているうちに、自身の転職理由を見失う傾向にあります。
例えば、ワークライフバランスの充実を求めて転職先を探しているのに、高収入の職場に目移りしてしまうと、後になって自分が求めていた職場とはかけ離れていることに気付き、また転職先を探すことになってしまうのです。
転職先を早くから一つに絞り込んでしまう
転職先を探していると焦りが出てしまい、少しでも早く候補を絞り込みたいと思うものです。
転職に失敗する人は早くから候補を一つに絞り込んでしまい、他の候補との比較や詳しい情報収集を怠ってしまいがちです。
全く同じ労働条件の医療施設であっても、医療設備や人材の育成方針、人間関係など、職場の内情は個々に異なります。そのため、それらを比較せず表面上の労働条件や処遇に惑わされて候補を一つに絞り込むと、転職後に自分のイメージと大きくかけ離れることに気付くことも少なくありません。
つまり、医師にとっても転職に失敗につながりますでのご注意下さい。
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先輩や友人の紹介に頼り過ぎる
転職は人生の中でも大きな転機になりますから、転職を決意するプロセスで大学の先輩や友人などに相談することは、とても意義のあることです。
しかしながら、転職先まで相談すると人間関係が足かせになってしまい、自分が抱いていた職場の労働条件から多少なりとも妥協せざるを得なくなり、その結果失敗につながることがあります。
医師転職の対処法
医師転職を成功させるためには、失敗する人の特徴を参考としながら、自分が転職して何がやりたいのかを精査し、それに見合う労働条件が提示されている医療機関など、転職先を見つけることが重要です。
転職理由を常に意識する
転職を決意するには様々な理由がありますが、転職先を探していると多くの医療機関などからの求人情報を目にすることになり、本来の転職理由を見失いがちです。
そこで、まずは自身の転職理由を書き出すなどして常に意識するとともに、転職先を絞り込む際には、労働条件は度外視して、まずは転職理由に合致した職場であるかを見極めます。
その上で、労働条件を精査していくと転職理由がブレることはありません。
転職先に求める労働条件に優先順位をつける
労働条件には様々な項目がありますが、一点だけに固執すると転職は上手くいきません。例えば、高い給与が示されていても、残業がとても多い職場だと体力が続かないこともあります。
そこで、転職先を絞り込む際には、あらゆる労働条件を洗い出して、その優先順位を明確にすることが大切です。
ちなみに、医師が転職を検討するにあたり、最低限確認しておきたい項目は以下のとおりです。ここに、自分が求める労働条件を追加・修正し、その優先順位をつけていくと転職先の労働条件に迷うことがなくなります。
- 年収は自分が必要とする金額と乖離していないか。
- 休暇の取得状況は自分が望む割合をクリアしているか。
- １か月の平均残業時間は許容範囲であるか。
- キャリアパスは納得のいくものであるか
- 職場の人間関係は良好化
- 医院長の経営方針や医療方針に賛同できるか
- 医療設備は自分のスキルを活かせるものが配備されているか
実際に医療施設に出向いてみる
求人広告では非常に魅力的な職場であると感じていても、実際に転職してみるとイメージと異なることがあります。
「百聞は一見にしかず」と言われるように、事前に転職先の候補となる医療施設や、病院に自ら出向き、そこで働く職員の表情や患者の数、職場の雰囲気など、気になる点を観察しておくと、こうした事態をさけることができます。
転職サイトを利用する場合にはコンサルに相談
最近では医師専門の転職サイトもあり、様々な労働条件を提示した求人広告が見受けられますが、ネット上の求人情報だけで転職先を絞り込むのはリスクが高くなります。
求人サイトには必ず人材紹介コンサルや、キャリアコンサルタントがいますから、気になる求人情報があればコンサルに相談して、求人情報には掲載されていない情報や詳しく知りたい情報（休暇の取得率・各種手当や福利厚生制度など）を確認しておくことが大切です。
また、こうしたやり取りを通してコンサルと懇意になると、ネット上の求人情報には掲載されない非公開求人を紹介してもらえることもあります。
まとめ
医師の転職が増えている背景には、多様な働き方に対応できる職場環境が整ってきたことがあげられます。そのため、転職理由も従来の年収アップを目指すものだけでなく、ワークライフバランスの充実を求めるものなど非常に多岐にわたります。
しかしながら、全ての医師転職が成功するわけではありません。転職に失敗する人の特徴として共通しているのは「自分が転職して何をしたいのか」がブレてしまうことです。
そこで、医師が転職に失敗しない対処法としては、転職理由を常に意識し、転職先の労働条件に優先順位をつけておくことがあげられます。また、実際に医療施設に出向いて職場環境を確認したり、転職サイトを利用する際はコンサルに相談して多くの情報を集めることが重要です。
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