医師の転職は他の職種と比較すると有利だと言われており、実際に医師に特化した転職エージェントも数多く運営されています。しかしながら、単に転職エージェントに登録しておけば、「転職が成功する」というものではありません。
「なぜ転職が必要であるのか」を明確にし、転職エージェントのメリットを把握した上で活用した方が良いのか否かを判断し、優秀な転職エージェントを選ぶことが重要です。
医師が転職を決断する理由
医師が転職を決断するには何らかの理由があります。最近では医師の不足が深刻であることから、給与面など高い処遇を提示する医療機関も増えています。そのため、有利な待遇を狙って退職を検討する医師も多いでしょう。
しかし、本来の転職理由を見失い、処遇面だけを追い求めていると、思わぬ落とし穴が待っています。
自分のやりたい分野で専門性を高めたい
医療の進歩や診療科目の細分化により、高い専門性を有した医師の育成が課題となっています。また、大学・大学院を卒業した後一定の経験を積むと、自分のやりたい分野で専門性を高めたいと考え始める医師も少なくありません。
そこで、より専門的な分野に取り組んでいる医療機関や研究室などに転職したいと考える医師が増えています。決して現在の職場に不満があるから転職を決意するのではなく、極めて前向きな理由であり、成功する可能性が高い転職理由だと言えます。
仕事も家庭も大切にしたい
医師は24時間体制で患者に向き合う過酷な職業だと認知されており、それが当たり前だとも考えられています。しかしながら、様々な職種で「働き方」が議論されている現状において、医師も同じ労働者として「働き方」を選択する時代になっています。
こういった状況において、仕事だけでなく家庭も大切にしたいと考えている医師は増加傾向にあり、心療内科など夜勤や救急病棟がなく、比較的勤務時間が一定で残業が少ない医療機関への転職を求める人も増えています。
夜勤や当直がある医療機関と比較すると、給与面での処遇低下は否めませんが、もともと、医師は給与水準が高いので、多少の処遇低下があったとしても大きなダメージはないでしょう。
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医局人事や院内の人間関係から逃れたい
大規模病院になればなるほど、医局人事や院内の人間関係など、医療行為以外の事柄に神経を使わなくてはなりません。特に医局人事においては、他府県の関連医療機関への転勤もあり、短期間のうちに職場や住まいが変わることもあります。
そこで、転勤が少なく人間関係で気を使うことが少ない中小規模の医療機関への転職を希望するする医師も増えています。また、中小規模の医療機関で病院経営や職場のマネジメントを勉強し、開業を目指す医師も少なくありません。
年収をアップさせたい
働き方が多様化してきた中でも、依然として年収のアップを理由に転職する医師が多いのも事実です。年収そのものは一般のサラリーマンよりも高額で知られる医師ですが、仕事内容や職場環境といった面では決して厚遇されているとは言えません。
人の命を預かるといった、非常に神経を使う仕事である上、夜勤や緊急時の対応など過酷な職場環境にありながら、勤務医の場合、年功序列の給与基準が厳格に定められており、安定的な収入が約束されている反面、いくら実績を積んでも給与面では優遇されてないため、より待遇の良い医療機関への転職を望む医師は後を絶ちません。
同じハードで、責任の重い医師としての仕事をするなら、少しでも給与などの待遇が良い病院で働きたいというのも納得感のある考え方でしょう。
医師が転職に失敗する理由
医師転職を希望する人は年々増えていますが、その全てが成功するわけではありません。そのため、転職を繰り返す医師もいますが、雇用する医療機関も短期間で転職する医師を雇用したいとは思いませんから、転職のたびに処遇が低下してしまっている医師も存在します。
実は、このように転職に失敗を繰り返す医師には共通する理由があります。医師が転職に失敗する共通要因について解説しましょう。
ブランドや年収ばかりに固執
ここ数年来、深刻な医師不足を解消するため、グレードの高い医療機関の求人も数多くあり、高い労働条件を示していることから、単にブランドや年収などを目的に転職する医師も少なくありません。
しかしながら、医師転職は前向きな理由がなければ成功しません。ブランドや年収に魅力がある医療機関では、高いスキルや仕事内容が求められます。つまり、覚悟を持って転職しなければ、転職先で後悔することになります。
明確なキャリアプランがない
医師に限らず転職は人生の転機となります。それだけに明確なキャリアプランが必要です。
例えば、現状で休暇が取れないことだけを理由に転職すると、自分が本当にやりたい仕事ができないなど、後々後悔することにもなりかねません。
転職を成功に導くには、5年後、10年後を見据え、自分がどういった医師になりたいのか、どういった働き方をしたいのかを明確にする必要があり、必然的にどういった転職先が適しているのも明確にしておく必要があります。
ストレス耐性が低すぎる
医師の職場は、患者さんに対する責任の重さ、進化する医療技術への対応、慢性化する長時間労働などストレスを溜めやすい職場であることは間違いありません。そのため、ストレスを理由に転職を考える医師は後を絶ちません。
しかしながら、「医師」という職種の固有のものが原因である場合、単に転職したからといって解消されないものもあります。つまり、ストレス耐性が低すぎると転職先でも同じストレスを抱え込んでしまいます。
少なくとも転職を決断する前に、ストレスを感じる理由を自ら分析し、それを発散する術を持っておくことが必要です。
転職先に対する情報収集が不十分
転職理由や希望する労働条件が明確であっても、転職に失敗する医師は少なからずいます。こういった医師は情報収集が不十分であることが考えられます。
同じ労働条件でも細部を確認していくと異なる部分も多く、また、求人情報と職場実態が異なる場合もあります。こうした情報は求人広告だけでは計り知れないものですが、表面に出ない情報こそが有益なものであり、収集することは十分に可能です。
医師が転職エージェントを活用した方が良い理由
転職エージェントなど民間職業紹介事業者を利用する医師は25%前後だと言われています。
さらに、転職エージェントも多く参加するインターネットの求人サイトを利用する医師は10%前後ですから、約35%の医師が転職エージェントなどを活用し、自分で転職先を探していることになります。
これだけの割合の医師が利用する転職エージェントですが、転職エージェントを活用するメリットについて整理しておきましょう。
豊富な求人情報を有している
医師が転職エージェントを利用する最大の理由が、転職エージェントが豊富な求人情報を有していることです。大半の医師は長時間労働に従事しているため、自身で労働条件に合致した求人情報を探し出し、チェックする時間がないのが実情です。
転職エージェントでは様々な求人情報を数多く有しており、希望する労働条件に合った転職先を絞り込んで紹介してくれますから、効率的に比較検討することが可能です。
さらに、非常に好条件であるため、一般に公開できない求人や役職つき医師などの重要ポストの非公開求人も数多く有しているのが大きなメリットです。
アドバイスやサポートが受けられる
転職エージェントに登録すると、専任のキャリアコンサルタントが紹介され、転職理由や求める労働条件についてヒアリングが行われます。その結果に基づいて、様々なアドバイスやサポートを受けることができます。
キャリアコンサルタントは医療業界に特化して転職サポートを行っており、医師が転職する際の注意点など、経験が豊富です。こういったキャリアコンサルタントからのサポート自体が転職エージェントのメリットとなります。
また、転職において自分の身の丈を知ることは非常に重要ですが、コンサルタントは、医師転職の実情や医療業界に太いパイプを有する転職のプロですから、現時点の経験やスキルから医師としての市場価値を教えてくれます。
職場実態の情報を入手できる
転職に失敗しないためには、職場実態を正確に把握することが大切です。
転職先の職場がどんな雰囲気なのか、働いている医師の経験やスキルはどの程度なのか、医師に求められる業務の範囲など、転職前に知っておかないと後悔してしまうことばかりです。
転職エージェントには、これまでの利用者など独自の情報網がありますから、求人情報ではわからない職場実態に関する情報も教えてくれます。したがって、転職後に「こんなはずじゃなかった」と後悔することもありません。
労働条件の交渉や転職準備をサポート
転職候補が絞られてくると、給与や勤務時間、休暇などの労働条件について詰めの交渉が必要になりますが、個人で労働条件を交渉するには限界があります。
その点、転職エージェントには豊富な経験がありますから、労働条件にかかる交渉を任せることができます。
また、転職の際には書類作成や面接対策など事前準備が必要ですが、多忙な医師にとっては非常に面倒な作業です。転職エージェントでは書類内容のチェックや面接のサポートも行いますので、効率的に事前準備が行えます。
転職エージェントを賢く活用するコツ
医師が転職する際には、転職エージェントを活用することは非常に有益ですが、コンサルタントに任せておけば、それだけで良いというものではありません。転職を成功させるためには、転職エージェントのメリットを十分に理解した上で、賢く活用することが重要になります。
コンサルタントとの関係
転職エージェントのコンサルタントは、様々な医師の転職をサポートしていますから、多くのプランを持ち合わせています。しかしながら、転職理由や求める労働条件が正確に伝わっていないと、的確なアドバイスやサポートを行うことはできません。
したがって、転職エージェントには腹を割って自分の想いを話すことが大切です。
家族の状況や休日の過ごし方などライフスタイルについて話すのも良いでしょう。コンサルタントとのコミュニケーションを充実させることが、転職を成功させるための第1歩です。
コンサルタントと相性を見極める
転職エージェントを活用するメリットは、コンサルタントのアドバイスやサポートが受けられる点ですから、コンサルタントの質とともに相性が重要になります。
いくら優秀なコンサルタントであっても、話しにくいコンサルだとコミュニケーションを図ることができません。
転職エージェントの会社に、相性が合わないからとコンサルタントの変更を求めることは、気が引ける部分ではありますが、転職エージェントも心得ていますから「合わない」と感じたらコンサルタントの変更を申し出る勇気を持つことが大切です。
複数のエージェントを活用
転職エージェントに相談する場合、1社だけでなく、2～3社程度に平行して相談しておくのが良いでしょう。
医師だけでなく、すべての転職者にとって、転職は人生の転機ともなる重大事です。そのため、失敗を避け、是非とも成功させたいものです。しかし、転機エージェントが紹介してくれる転職候補先や、サポート内容は、担当するコンサルタントの実力でも大きく左右されます。
そのため、偶然、力量の低いコンサルタントが担当するという可能性もあります。
転職エージェントを1社に絞って相談していると、そのコンサルタントの力量の程度が解りづらかったり、紹介される医療機関が絞られてしまうといった懸念もあります。
そのため、複数の転職エージェントに相談されてみるのが良いでしょう。
他の転職エージェントの利用を伝える
複数の転職エージェントを同時に利用する場合、そのことを伝えるか否かを悩む人も少なくありません。他の転職エージェントも並行して相談しているなど言いにくいという医師もいるでしょう。
しかし、転職エージェントも理解していますので伝えるべきです。そうすると、コンサルタントは自社の実績を挙げたいため、より労働条件が良く希望に適した求人を探してくれます。
ただし、複数の転職エージェントに登録していることばかりを強調して、より良い求人情報を引き出そうとするのは考えものです。コンサルタントも人間ですから度を過ぎるとモチベーションを低下させてしまうこともあります。
転職ありきで利用しない
転職エージェントに登録する人は、転職することを目的としていますが、今の職場に残ることも選択肢の1つに入れておく方が賢明です。転職はキャリアアップや理想とする職場で働くチャンスですが、転職市場の動向や自らの経験やスキルを考慮した場合、転職を控えた方が良い結果を生むこともあります。
転職エージェントを賢く活用するには「転職ありき」で考えるのではなく、「転職市場の動向や自分の価値を見極めることができてよかった」と考える柔軟性を持って、現時点で転職すべきか否かを冷静に判断しましょう。
転職エージェントの選び方
優秀な転職エージェントを選ぶために、複数の転職エージェントに登録するのも一つの方法ですが、その分迷いが生じやすくなります。最初からたくさんの転職エージェントに登録するのではなく、チェックポイントを定めた上で登録することが大切です。
避けるべき転職エージェントの特徴
医師の転職において避けるべき転職エージェントの特徴としては、「登録ありき」「転職エージェントの都合で求人を紹介する」「コンサルタントの質が低い」ことが挙げられます。
もちろん、転職エージェントはボランティアではありませんから、自社の利益を求めることは仕方ありません。しかしながら、クライアントの要望に応えられない転職エージェントには登録する意味がありません。
【避けるべき転職エージェントのチェックポイント】
・やたら転職エージェントへの登録を勧めてくる
・こちらの要望をしっかりと聞こうとしない・理解していない
・希望とは異なる求人ばかり勧めてくる
・求人情報にある職場の実態を把握していない
・具体的なアドバイスやサポートができない
優秀な転職エージェントの特徴
優秀な転職エージェントの特徴は「医療業界に精通しパイプがある」「コンサルタントの質が高い」「実績が豊富である」ことが挙げられます。
とりわけ、コンサルタントの質は極めて重要ですが、コンサルタントを育成・教育するのは転職エージェントですから、優秀なエージェントを選べば必然的に優秀なコンサルタントに出会うことができます。
【優秀な転職エージェントのチェックポイント】
・医療業界に精通しており業界内でも名前が知られている
・数多くのコンサルタントが在籍しており事務所の清掃が行き届いている
・転職希望者の話をよく聞いた上で希望に沿った転職先を何度も提案してくれる
・転職先の人事担当者と信頼関係を築いており職場実態を把握している
・転職先のメリットだけでなくデメリットも教えてくれる
・転職候補先の面接サポート（面接の特徴など）を行ってくれる
転職エージェント選びに迷ったら
転職エージェント選びに迷ったら、実際に利用した人の意見（口コミ・評判など）を聞くのが最良の方法です。実際に転職エージェントを利用した人であれば、リアルなメリットやデメリットを教えてくれます。
最近では医師特化型の転職エージェントに関する口コミサイトもたくさんありますから、そこでの情報を参考にするのも良いでしょう。
また、敢えて複数の転職エージェントに登録して比較することも一つの方法です。ただし、登録する転職エージェントは2〜3社に止めるとともに、比較する際のチェックポイントを明確にしておくことが大切です。
【転職エージェントを比較する際のチェックポイント】
・より希望に沿った求人を紹介してくれるのはどちらか
・より医療機関の職場実態に精通しているのはどちらか
・こちらの相談に親身になって乗ってくれるのはどちらか
・アドバイスやサポートが迅速なのはどちらか
・話しやすいコンサルタントが在籍しているのはどちらか
おすすめの転職エージェント3選
以下に特におすすめの転職エージェントを3つご紹介します。医師が転職する際は、「医療業界特化型」の専門転職エージェントを活用することがおすすめです。
医療業界は、一般的な企業と専門性などが異なるため、単純に大手転職エージェントを選択するだけでは、有効なアドバイスや紹介を期待できません。以下は、医療業界に特化した、専門転職エージェントとなります。
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まとめ
近年、医師が転職を検討する場合、転職エージェントを利用する医師が増えています。転職エージェントのメリットは、数多くの求人情報を紹介してくれることに加えて、最大のメリットはコンサルタントのアドバイスやサポートを受けられることです。
転職エージェントのコンサルタントは、医療業界や転職市場に精通していますから、転職を希望する医師の経験やスキル、転職理由や求める労働条件から最適な医療機関を紹介してくれます。
また、各医療機関の人事担当者との信頼関係を構築していますから、求人情報ではわからない職場実態を教えてくれます。そのため、医師にとって転職に成功する確率が非常に高くなります。
医師が転職エージェントのメリットを最大限に実感するには、優秀な転職エージェントを選ぶことが大切です。そのためには「医療業界に精通しパイプがある」「コンサルの質が高い」「実績が豊富である」転職エージェントであるか否かを見極めることが重要です。
